Japanische Klassiker mit Furigana
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いなか、の、じけん
いなか、の、じけん
夢野 久作
Lesen Sie いなか、の、じけん von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.535 Zeichen · 78 Bildschirme
踊らせてみよ……トト、……おっしゃいましたので……ヘイ……オタスケを……」
「ナニ……飯を喰ったア……一円くれたア……」
若い主人はメンクラッたらしく眼を白黒さしていたが、忽ち青くなって信玄袋を投げ出すと、次の間の上り框に駈け寄った。そこにひろげられた枕屏風の蔭に、空っぽの飯櫃がころがって、無残に喰い荒された漬物の鉢と、土瓶と、箸とが、飯粒にまみれたまま散らばっている。そんなものをチラリと見た若い主人の眼は、すぐに仏壇の下に移ったが、泥足のままかけ上って、半分開いたまんまの小抽出しを両手でかきまわした。
「ヤラレタ……」
と云ううちに見る見る青くなってドッカリと尻餅を突いた。頭を抱えて縮み込んだ。表の見物人はまん丸にした眼を見交した。
「……マア……可哀相に……留守番役のおふくろが死んだもんじゃけん」
「キット流れ渡りの坑夫のワルサじゃろ……」
その囁きを押しわけてこの家の若い妻君が帰って来た。やはり野良行きの姿であったが、信玄袋を探し当てて出て行く乞食爺の姿を見かえりもせずに、泥足のままツカツカと畳の上にあがると、若い主人の前にベッタリと坐り込んだ。頭の手拭を取って鬢のほつれを掻き上げた。