Japanische Klassiker mit Furigana
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いなか、の、じけん
いなか、の、じけん
夢野 久作
Lesen Sie いなか、の、じけん von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.535 Zeichen · 78 Bildschirme
一時間ばかり走って、やっと都の中央の、目貫きの処に開業している、遠藤という耳鼻咽喉科病院の玄関に乗りつけた松浦先生は、滝のように流るる汗を拭き拭き、通りかかった看護婦に名刺を出して診察を頼んだ。
「鯛の骨が咽喉へかかりましたので……どうかすぐに先生へ……」
間もなく真暗な室に通された松浦先生は、白い診察服を着けた堂々たる遠藤博士と、さし向いに坐りながら、禿頭をペコペコ下げて汗を拭き続けた。
「そんな訳で、気が急いておりましたせいか、ここの処に鯛の骨が刺さりまして、痛くてたまりませんので……実は先年、講習会へ参りました時に、先生のお話を承りまして……ある老人が食道に刺さった鯛の骨を放任しておいたら、その骨が肉の中をめぐりめぐって、心臓に突き刺さったために死亡した……という、あのお話を思い出しましたので……」
「ハハハハハ……イヤ。あの話ですか」
と遠藤博士は、肥った身体を反り気味にして苦笑した。
「あんな例は、滅多にありませんので……さほど御心配には及ぶまいと思いますが」
「ハイ……でも……実は、忰が、来年大学を卒業致しますので、それまでに万一の事がありましては申訳ありませんから、念のために是非一ツ……」