Japanische Klassiker mit Furigana
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いなか、の、じけん
いなか、の、じけん
夢野 久作
Lesen Sie いなか、の、じけん von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.535 Zeichen · 78 Bildschirme
桃の刺青は真青になって、唇を噛んだ。起き上るや否や、
「覚えていろッ」
と云い棄てて裏口から飛び出した。村中を駈けずって仲間を呼び出してまわったが、その仲間の四五人が、冷酒の勢いに乗じて別荘に押しかけた時分には、若旦那夫婦と女中二人を乗せたモーターボートが、大凪の沖合はるかに、音も聞こえない処に辷っていたのであった。
桃の刺青の仲間はいよいよ腹を立てた。炎天を走って来たお蔭で、一時に上った冷酒の悪酔いと一緒に、別荘の中へあばれ込んで、戸障子や器物を片っ端からタタキ毀し初めた。それを押し止めに出て来たお吉婆さんまでも序にタタキ倒おしてしまったが、その婆さんの報告で駐在巡査が駈け付けると、すぐに桃の刺青を取り押えて、ほかの四五人と一緒に裸体のまま本署へ引っぱって行った。
村中は忽ち大騒ぎになってしまった。この塩梅では四五日のうちに迫っている夏祭りがトテモ出来まいというので、年寄達が寄り合ったり、村長と区長が夕方から警察に陳情に行ったりしたが、そのうちに別荘の持ち主の方で、告訴しないように取計らった事が、町から電話で知らせて来たとかで、間もなく若い者たちは放免されることがわかったので、やっと村中が落ち付いた。