Japanische Klassiker mit Furigana
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おもかげ
おもかげ
山本 周五郎
Lesen Sie おもかげ von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.242 Zeichen · 21 Bildschirme
叔母さま、正之助はこれから本気になって勉強します、そして、いつ死んでも、お母さまに褒められるようなよい子になります。どうぞ、こんどだけおゆるし下さい、お願い申します」
叔母さまの頬がひきつるように顫え、眼をお濡らしなすったようだった。そして、しばらくのあいだ正之助の顔を見まもっていらしったが、やがてしずかに衿を掴んでいた手を放した。
「ようございます、いま仰しゃった言葉をお信じ申しましょう。ではお家へ戻って、はやく塾へおいでなさいまし」
そのときのことはいつまでも忘れられなかった。夜ふけなどにふと眼ざめて、森閑とした久松山のあたりに狐の啼くこえを聞いたりしても、もう頭から夜具をかぶったりするようなことはなく、じっと闇のなかにお母さまの顔を思いながら怖さと闘った。「お母さまがお望みなさるような強い子にならなければ――」そう思って歯をくいしばった。いちどはおぼろげになった母のおもかげが、あざやかによみがえってきたのはその頃からだった。裾へひくほどもあったお美しい黒髪、いつもしずかに微笑をうかべておいでになるお唇もと、そしてまたたきをすると、云いようもなくおやさしい艶のあらわれるあのお眼など、いろいろなことが、生きていらしった頃よりもまざまざと、本当にまざまざと思い描くことができた。