Japanische Klassiker mit Furigana
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おもかげ
おもかげ
山本 周五郎
Lesen Sie おもかげ von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.242 Zeichen · 21 Bildschirme
四
四
江戸へ出た正之助は、間もなくある高名な学者の塾へ入門した、その塾は規則がきびしくて、なかなか普通の者では入門できないのだが、正之助は素読吟味(入学試験のようなもの)も難なくとおり、ずっと年長の者をとびこして入門することができた。そのとき父は、「なかなか正之助はえらいのだな――」そう云っておうれしそうな笑い方をなすった。正之助もうれしかった、その夜はなかなか眠れず、なんども父の言葉を口のなかで真似てみた。「お母さま、正之助はえらいでしょう、ねえ、えらいでしょう――」そんなことをつぶやいていると、亡き母のおもかげが宙にうかび、やさしくまたたきをなすって、いくたびも頷いて下さるように思えた。
鳥取のくにもとでぬきんでたように、江戸屋敷でも間もなく正之助の名は評判になった。学問にすぐれただけではなく、武芸の道場でも年長のひとの眼を集めた。けれどもう、正之助はそれで慢心するようなことはなかった。朝はいつも四時に起き、冬の凍てるなかでも裸になって身をきよめた、夜は更けるまで机からはなれず、父に叱られてから寝るようなことがしばしばだった。
あくるとしの二月のことだった。