Japanische Klassiker mit Furigana
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さまようまちのさまよういえのさまようひとびと
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
国枝 史郎
Lesen Sie さまよう町のさまよう家のさまよう人々 (さまようまちのさまよういえのさまようひとびと) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.916 Zeichen · 75 Bildschirme
九
が、すぐにしまったと云うように、その手をダラリ、と下げて了うと、くず折れるように肘掛椅子の中へ体を埋めて了いました。
「ご心配には及びません。私は幇志では無いのですから。……勿論お嬢様も然うではないでしょうな。……私にはよく解って居りますよ。……そうして最早この問題には、触れないことにいたしましょう」
私はこう云って腰かけました。
九
そう私に云われたので、初枝嬢はホッとしたようでした。
しかし黙って俯向いたまま、顔を赧めては居りました。
と、不意に顔を上げ、私の顔を正視しました。
その顔を私も見詰めましたが、
(成程)
と思わざるを得ませんでした。
徴候がすっかり出ているからです。
――物を見てはいるが見えてはいない眼付!――。
そういう眼付であったからです。
(こんな可愛らしいお嬢さんを、青幇の奴等め、ひどいことをし居る!)
私は義憤を感じると共に、初枝嬢に同情して了いました。
「お嬢さん」
と其処で話しかけました。
「お体のお加減がお悪いのでしょうね」
「はい。……いいえ。……でも矢っ張り」
「何時頃お悪くなりますかな?」
「…………」
「深夜でしょうな。……二時か三時頃。