Japanische Klassiker mit Furigana
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さまようまちのさまよういえのさまようひとびと
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
国枝 史郎
Lesen Sie さまよう町のさまよう家のさまよう人々 (さまようまちのさまよういえのさまようひとびと) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.916 Zeichen · 75 Bildschirme
十
「云って下さい、貴郎って人、どういうお方なのでいますか!」
「で、今度はお嬢様の番だ」
「お母様! お母様! 早く来て下さい!」
「お嬢さん、騒いじゃァ不可ません。何んでも無いことじゃァありませんか。貴女のお屋敷に門礼がある。柵鉄也と書いてある。多少上海の事情通なら、柵家に起こった今云ったような事件は、誰でも知っている筈です。で、私も知っているだけです。……そうして現在お嬢様が、殺されかかっているというそのことは、たった今貴女の愛人にあたる、細川君から聞いたので、これだって間違いありません」
さて此処で柵家に就いての、怪奇の出来事をお話ししましょう。
十
柵鉄也が上海へ来たのは、十八歳の時だったということで、通訳として来たのだということです。
或外人の通訳として。
その後いろいろの商館や、公司や洋行に勤務したそうで随分苦労はしたものだそうです。
苦労したが金は儲からず、又、位置なども出来なかったそうで、三十歳頃迄はこれといって、社会の表面へも現われず何んでも無い人間だったということです。
ところが夫れが四十歳頃からメキメキと金を儲け出し、社会的位置もよくなって来て、××会の会長だの△△倶楽部の副総裁だのと、そんなようなものにさえなって了い、上海在留の日本紳士中での、幅利きの一人となったそうです。