Japanische Klassiker mit Furigana
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さまようまちのさまよういえのさまようひとびと
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
国枝 史郎
Lesen Sie さまよう町のさまよう家のさまよう人々 (さまようまちのさまよういえのさまようひとびと) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.916 Zeichen · 75 Bildschirme
五
と、その男は黙って了いました。しつこく訊ねようとしないのです。私の心持が解ったからですかな。
その間に私はその男を、仔細に観察してやりました。
その結果私は、
(おや)と思いました。(この男は決して月並の、上海ゴロでは無さそうだ。いや、善良な人間らしい。零落した貴族の若様で、ひどく悩んでいる人間らしい)
五
広い額、端麗な鼻、弓形をしている上品の口、色は白皙で髪が漆黒で、それを真中から分けている。少し古くはあったけれど、よごれめの無い折目正しい背広、年は二十八九歳でした。特に私の眼を引いたのは、愁を持ちながらも濁っていない、理智的というよりも情熱的の、その青年の立派な眼でした。
(こういう眼を持っている青年に、悪い人間というものは滅多に無い)
そう私は思いました。
そこで私は警戒を解いて、私の方から話しかけて見ました。
「上海に長くお住居ですか」
「ええ、相当永く居ります」
「何か研究でもなされているので?」
「研究? それは昔のことです」
そう云った時その青年の眼に、自分自身を嘲けるような、自分自身を憐れむような、そういう表情が表われました。
「内地の大学に居りました頃にはね、私も何かしら研究したものです。