Japanische Klassiker mit Furigana
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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Lesen Sie 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.470 Zeichen · 244 Bildschirme
取り分け私は生まれた上新田の眺めがよい。
試みに、上新田の田圃へ出て、東西南北の風姿に一瞥を与えようか。
さて東の空へまず手を翳そう。山田郡と思える方の地平線から、低く起伏した浅緑の峰々は桐生市の裏山から野州の足利、安蘇、下都賀郡の方へ連なる一連の山脈である。真夏がくると朝の四時半には、もう敦光が鮮やかに、きらめくのである。そこに東雲のたなびくころ、幼い私は父に連れられて、利根の流れへ鮎釣りに行った。利根の崖に、楢の若葉が天宝銭ほどの大きさに、育っていたのである。
この山脈の上にはもう五月に入ると、いつも鈍い銀色の、雲の峰が立つ。そして積乱雲は、夕陽を映し受けて、緋布のように紅く輝くのを、私は子供の時から眺めてきた。しかしこの雲の峰に、決して上州方面へは雷雨を齎さない。いつも、東の空へ長く倒れる。多分、下野国の耕野を白雨に霑すことであろう。
それから東北に眼を送ると足尾の連山が、赤城の長い青い裾から、鋸の歯のように抜けだしている。足尾山は、中宮祠湖畔の二荒山や、奥日光の峻峰を掩い隠しているけれど、わが上新田から一里半ばかり南方の玉村町近くへ行くと赤城と足尾連山の峡から奥白根の高い雪嶺が、遙かに銀白色の光を放っているのを眺め得よう。