Japanische Klassiker mit Furigana
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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Lesen Sie 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.470 Zeichen · 244 Bildschirme
あっ、鼻糜を抜いた。イヤイー、イヤイーと呼ぶ牛方の声援が起こると、もう四周の崖の上は、雑然鬧然として興奮した。ウワーというどよめきが白髪神社を埋める杉の大樹の森を揺すった。
果たせる哉、杢平牛は神火を纏う龍の如き、凄まじき姿で、三十間ばかりの間隔を猛然として宙を飛ぶように突っ走った。この牛の角は、特に鋭い。その角を、孫七の頭上目がけて、骨をも通せと突っ込んだ。
かっ※(感嘆符二つ、1-8-75) 孫七牛は頭を中段に構えて、この鋭い杢平の鋭鉾をがっちりと受け止めた。二秒、三秒。角と角が絡んで、そこから熱気が沸騰するかと思う。押した。孫七牛が、杢平牛の巨体を押した。西の土手に向かって押した。見物人は興奮、陶酔、戦慄――なにがなんだか分からない。
杢平牛の巨体が、ずるずるずると、十四、五間うしろへ押された。まだ鼻糜を抜いてから十秒とたっていない。押してくる孫七牛の角を、杢平牛は、するりとはずした。角力のいわゆる肩すかしだ。
相手の角をはずして置いて、杢平牛は相手と頭を揃えて、平行した。つまり、肩と肩をならべて同一方向に立ったのだ。その瞬間、杢平牛はその鋭い左の角で、孫七牛のぼんのくぼへ、ひと突きくれた。