Japanische Klassiker mit Furigana
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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Lesen Sie 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.470 Zeichen · 244 Bildschirme
だが、昔は関所があっただけに、なかなか大きな部落で、山の村としてはどの家も構えが大きい。
だから、村には何軒かの名門があった。そのうちでも、某というのは一頭地を抜いた名家で今は退職しているが、この家の長男は大審院の判事まで栄達した人である。その人の妹に素晴らしい美人があった。
兄が東京へ伴って教育したのであるから、学問のことは勿論、行儀作法から女の芸事にかけては、何一つ欠くるところがないまでに育て、そして躾けたのである。そして天稟の麗質の持ち主であった。
縁があって、この美人は熊本県の千万長者の長男のところへ嫁いで行った。二十一歳であったという。
兄も、故郷猿ヶ京の親達も良縁であると喜んだ、がほんとうは良縁ではなかった。婿さんというのは学校出ではあるけれど、商才に長じた人物で、ちょうど支那事変がはじまった景気の動きに乗り、大資本を利用して、大いに儲けた。
千万長者が、さらに儲けたのであるから婿さんから見れば、金は湯や水にひとしい。呑み、買う、幾人かの妾は置く。今日は博多、明日は大阪といった具合に、殆ど熊本の家へは寄りつかないのである。
夫婦の愛情など、生まれてくるものではない。