Japanische Klassiker mit Furigana
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ひやめしものがたり
ひやめし物語
山本 周五郎
Lesen Sie ひやめし物語 (ひやめしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.861 Zeichen · 31 Bildschirme
こうして三人の兄たちは、陽気に話したり飲んだりした。少年のように思っていた末弟がいつかそんな年齢になり、艶めいた話題の主になったということが、どれほどか彼等を楽しく興がらせたのである。その縁を纒めようとか、纒めるために方法を考えようなどという相談はまったく出なかった。向うが嫁に遣らなければならず、こっちが四男のひやめしという条件では、もちろん思案する余地などありはしない、それはわかりきっていたが、大四郎は淋しいような、哀しいような孤独感にとらわれ、ほどをみはからってその座を立った。
又三郎の話は、彼には実感が来なかった。桔梗の花を思わせるような娘の俤は、いまでも朧げには眼に浮ぶし、さっさっと裾さばきの凛とした歩きぶりなどは鮮やかに思いだせるが、その娘が自分を恋いわびて、病む人のように寝たり起きたりしているとか、泣きながら独り折鶴を作っているとかいうことは、どう想像しても現実感が伴わないのである。だいいち、自分が想われているということからして、妙に具合の悪い、あやされているような、空ぞらしい感じだった。
「ともかく漠然としたもんだ」彼は独りでこう呟いた、「下女の独り合点でなにを間違えたか知れもしないし、色紙で鶴ばかり折っているったってどうしようもありゃしない、つまり、それっきりの話じゃないか」