Japanische Klassiker mit Furigana
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ひやめしものがたり
ひやめし物語
山本 周五郎
Lesen Sie ひやめし物語 (ひやめしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.861 Zeichen · 31 Bildschirme
二
大四郎のこういうすなおさは類が少ない、椙女は継ぎ物をしていた。
「中の戸納をあけてごらんなさい」はいって来た大四郎を見ると、椙女は例のとおり茶箪笥のほうへ振返った。「残り物だけれど、栗饅頭がありますよ」
栗饅頭はあった。彼は二つ皿に取ったが、出てはゆかずにそこへ坐った。椙女は縫目を爪で緊めながら、「お茶を淹れましょうか」と云った。彼は饅頭を一つ摘んで、喰べたものかどうか考える風だったが、そのまま皿へ戻して母の顔を見た。
「お母さん、私も二十六になってしまったんですね」
「そうですよ」椙女も息子を見た、「それがどうかしたんですか」
「ついこないだ気がついたんですが、さもなければまだ気がつかなかったかも知れません、人間なんてうっかりしたものですね」
「人間がではなくあなたがでしょう、でも、……さもなければって、なにか年に気のつくようなことでもおありだったの」
「みそめちゃったんですよ」
二
椙女は手を止めて彼を見た。武家の婦人でもそのくらいの言葉は知っている。然しこの暢気な四男坊が、その意味を知って云ったのかどうかが疑わしかった。
「はっきり仰しゃいな、どうしたんですって」