Japanische Klassiker mit Furigana
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ひやめしものがたり
ひやめし物語
山本 周五郎
Lesen Sie ひやめし物語 (ひやめしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.861 Zeichen · 31 Bildschirme
六
堤町の中川といえば藩の中老で、五千石の扶持である。そのまま預けようとすると、女中はいちど帳場へ訊きにいったうえ、こちらで預かるのは困るという返辞を持って来た。
「今日は中川さまはおみえになりませんそうで、お紙入が此処にあるわけがございませんし、もしや掛り合にでもなるようですと……」
「じゃおれが届けよう」彼は面倒くさくなってそう云った、「帰りに届けるからと帳場へそう云っておいて呉れ」
六
いわゆる豪遊が済むと、彼は半刻ばかりうたた寝をやった。酔っていたからではあろうが、ちょっとした度胸である、それから顔を洗って、ゆっくり茶を啜って河重を出た。日はようやく傾いて、やや冷えてきた風が酔いの残っている肌を快く撫でてゆく、彼はなに事かやってのけた者のような、自信のついたゆたかな気持で悠然と歩いた。……堤町へはまわりになるが、さして遠くはない、その屋敷も見覚えがあるので、捜すまでもなくやがてゆき着いた。五千石の格式だけに土塀を取廻した屋構え大きく、門をはいった横のところには火見櫓が建っていた。厩があるのだろう、すぐ近くに馬の嘶きが聞えた。彼はちょっと考えて、脇玄関へ訪れた。