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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひやめしものがたり

ひやめし物語

山本 周五郎

Lesen Sie ひやめし物語 (ひやめしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.861 Zeichen · 31 Bildschirme

Aozora Bunko

落ちて頭を打って以来だそうだが、少年じぶんは朝めがさめるとすぐ饒舌りだして、夜は寝入るまで殆んど舌の止まることがなかった。父がずいぶん根気よく叱ったり折檻もしたけれど、半日と利き目のあった例がなかった、しまいには精を切らして、「こいつの口には紐が無いんだ」と投げてしまった。今はそれほどでもないが、兄弟で集まる時などは自在に舌の健康なところを示した。

嫂が催促に来たので、ようやくそこらを片付けて立った。客間にはもう灯が入れてあり、次兄の粂之助も来て、三人で飲み始めていた。彼の席は三兄の隣りに設けてあった。又三郎は例によって独りで饒舌っていたらしいが、大四郎が坐ると、その盃に酌をしながら、長兄のほうへ振向いて妙なことを云いだした。

「兄さん、四郎に艶聞があるのを知っていますか」

「知らないねえ」又左衛門はほうというように末弟を見た、「そんなことがあるのかい四郎」

「四郎は知らないんですよ、或る家の娘が四郎をみそめたというんです」

「本当かね、それは」粂之助はもう赤く酔いの出た顔で疑わしそうに笑った、「また三郎のでまかせじゃないのか」

「まじめな話ですよ、今日の酒は半分はそのお祝いという意味があるんです、とにかく四郎がよその娘にみそめられたというんだから、祝杯の値うちはあるでしょう」