Japanische Klassiker mit Furigana
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へちまのき
へちまの木
山本 周五郎
Lesen Sie へちまの木 (へちまのき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.120 Zeichen · 58 Bildschirme
おそでのとしは三十八九、大きな躯で、立ったりあるいたりすると、床がみしみし鳴るくらいであった。そのくせ顔は狐のように細く骨ばっていて、人間どもはみな敵だとでもいうように、尖った三白眼でゆだんなくあたりをねめまわしているし、ものを云う言葉はひとことひとことが棘を持っていて、相手に突き刺さるように感じられた。
「この店はあの女狐のものなんだ」と木内桜谷が房二郎に囁いた、「まえの亭主が米相場をやっていて、死ぬ間際にどかっと儲けたらしい、その金をめあてに、あのちょび髭がとりいってものにし、この文華堂を始めたんだそうだ」
房二郎が云った、「世の中には酔狂な人間がいるもんだな」
「しっ、聞えるぜ」と木内が云った。
いまでいえば編集部というのだろう。二階の往来に面したほうに、八帖二つをぶち抜いた部屋があり、古机が五つ、一方は記事を書く部屋、一方には絵描きや摺師や、版木彫りの職人たちがいた。絵描きの常さん、版木彫りの源さんは、ともに五十がらみでともに独身、いつも「この世界がひっくり返ればいい」とでも云いたげな、渋い顔をしてい、どちらも、自分は江戸一番の職人だ、という自信を躯いっぱいに詰め込んでいるようにみえた。