Japanische Klassiker mit Furigana
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アパートのさつじん
アパートの殺人
平林 初之輔
Lesen Sie アパートの殺人 (アパートのさつじん) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.579 Zeichen · 39 Bildschirme
「誰も来やしないと言ったら、わたしの言うことを信じたらいいじゃないの」と彼女はやや気色ばんで言いました。「わたしの言うことが、あんたにはそれほど信用ができないの? そりゃね、女優なんてしょうばいをしておれば、いつどんなお客があるか知れないわよ。それだけはことわっときますけど。でも、今日は誰も来やしないんです。来たものを来ないなんてあんたにかくしたって、わたしに何の利益があるの?」
こう言ってしまうと、彼女は、横を向いて、つんとすまして、またバットをつまみました。
「だってあんたはバットだけしかのまないんだろ?」
私は、眼の前にある灰皿の敷島の吸い殻が眼についてしょうがないので、ついこんな言葉を口走ってしまいました。言葉が口の外へ出ると同時に後悔したんですが、もう追っつきません。
みさをの眼がその時ちかりと光りました。きっと私を見下げはてた奴だと思ったにちがいありません。彼女はナルコポンの効果で、紅く上気した顔を技巧的にくずして、甲高い声で笑いました。その笑いは私の腸にしみこむようでした。なぜって私の言った卑怯な言葉がはずかしかったからです。
「ああ、敷島の吸い殻がここにあるんで、あんたは疑ってるの、まるでシャーロック・ホームズのようね? そりゃ私だって、敷島は金輪際のみませんと神様に誓ったわけじゃないんです