Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
ところが、一章唄い切らない中に井深君はやめた。
行くての向う側の家並に切れ目が見えて、つまり横通りがあって、其処の角の赤と緑との明るい灯がついている下に何やら人々がごたごたとたかっているのである。色のついた灯は Owl Grill & Restaurant と大きく切り抜いた西洋料理店の軒燈であった。おや――喧嘩かな。アウル・グリル・エンド・レストラントか? 上海にいた時分には、あすこへよく飯を食いに行ったものだったが……。と、井深君は、平常ならば銀座の真中で土地の人気者たちの大喧嘩があって、どんなに黒山の人だかりがしていたにしろ、足をとめたりなぞしないのだが、その晩に限ってどうしたわけか、その大袈裟な軒燈につられたものか、つい電車道を横切って、そっちの方へ近寄ってみたのであった。その西洋料理店は名前こそ堂々としていたが、もとよりペンキ臭い安普請のけちな店構えであった。植木会社の貸物らしい大きな糸杉の植木を飾った入口の仏蘭西扉の前に十人位の者が立って中を覗き込んでいた。仏蘭西扉の傍には、何のつもりか舶来の酒の壜や前菜料理の材料なぞと一緒に大きくふくらましたゴム風船の沢山浮んでいる見世飾があって、それらの透き間から垣間見ている者もいた。