Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
そしてやはり赤い煙突に眺め入っていた彼女と顔を合わせると、またちょっとばかり赭くなりはしたが、極めておずおずと呼びかけた。
――今日は、お嬢さん。お病気はよろしいんですか?」
――ええ。……」
彼女はなぜ青年が自分のことを知っているのか不思議に思った。
――お嬢さんは、何時でもそこのお部屋にいるんですか?」
――ええ。……」
彼女を見上げている青年の眼が、決して少しも彼女を見つめようとはしないのを不思議に思った。
――何を見ていらっしゃったの?」
――あなたのお家の赤い煙突。」
――僕の家の赤い煙突ですって?」
青年は変な顔をして、自分の出て来た邸の屋根を振り仰いで見た。けれども青年のいるところからは煙突は見えなかった。
――でも、ちっとも煙が出ないんですもの。赤い煙突はなぜ煙を吐かないのでしょう?……」
――さあ、なぜでしょうかね……」
青年は曖昧な風に笑った。そして青年は彼女の振分髪の先で、夕風に大きな花びらのように揺いでいる二つの水色をしたリボンを、恰も本当の花を見るような眼ざしでもって見入った。
それから間もなく彼女はその青年と十年も前から知り合いであったのとちっとも変らない位親しくなった。