Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
』
イワンの兄は、その朝そう云ってイワンを揺り起しました。
イワンは窓から金色の朝日のいっぱいにさしている庭の景色を眺めました。するとイワンのおどろいたことには、花畑の間を、今迄についぞ見たこともない人形のように可愛らしい娘が、如何にも楽しげに、小踊りしながら歩き廻っているではありませんか。イワンは眼を瞠ったまま訊ねました。
『兄さん。あの人は誰だろうか?』
『兄さんのお嫁さんさ。』
『それで家の人になったのだね――』
『そうだよ。』
イワンは、そんな綺麗な女の人と一つの屋根の下に住んでいられることを思うと、胸が躍りました。
イワンは併し、娘の姿に見恍れているうちに、だんだんせつなくなりました。
イワンは、娘の頭の先から足の先迄に、恋をしてしまったのです。
イワンは、到頭思い切って云いました。
『兄さん。兄さんはお嫁さんと、僕の銀の箱の鍵とでは、どっちが余計欲しいと思う?――』
『なぜ、そんな事を云い出したのだ?』とイワンの兄は、喫驚してきき返しました。
『僕は兄さんが、金貨や畑なんかではなく、あのお嫁さんと鍵とを取り換えてくれればいいと思うのだけれど。』
『それは本当のことかい? イワンや!』