Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.444 Zeichen · 30 Bildschirme
その瞬間、なにか形容し難い戦慄が、電光のように頭のてっぺんから爪先まで差しつらぬいた。
自分のうしろで、なにか、物に触れ合うような異様な気配を感じた。キャラコさんは、ぎょッとして、ふりかえる。
この部屋の中に何かいる!
もの静かな息づかいをしながら、微妙に動き廻っているものがある。
気のせいではない。何か模糊としたものが、まじろぎもせずに、じぶんを瞶めている。
キャラコさんは、不安な眼差しで部屋の中を見廻したが、なにものも見当らない。寒々とした気持になって、夢中で部屋の中を探し廻る。ふと、壁ぎわの寝台の下を覗くと、その下闇の中に、燐のようなものが二つ蒼白い炎をあげている。
お雪さんというペルシャ猫だった。
キャラコさんは、ホッとして、額の汗を拭く。
「おやおや、お雪さんだったの? 遊んであげたいけど、いま、ちょっとご用があるから、しばらく戸外へ出ていてちょうだい。……あなたに、見ていられると、あたし、困るの」
猫を抱きあげて窓から庭へおろしてやる。
お雪さんは、お愛想に、ザラリとした舌でキャラコさんの手の甲を舐めてから、足を振りながらゆっくりと母屋のほうへ歩いて行ってしまった。