Japanische Klassiker mit Furigana
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モスクワいんしょうき
モスクワ印象記
宮本 百合子
Lesen Sie モスクワ印象記 (モスクワいんしょうき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.941 Zeichen · 42 Bildschirme
このような情景もある。
暖い。街角の大寒暖計は六度だ。往来の雪がゆるんで、重く、歩き難い。午前の街上に日光がふりそそぎ、馬も滑りがわるいから体から湯気を立てて働いている。花屋の飾窓の氷がとけて、花が見えた。そばの壁に、婆さんと片脚ない男が日向ぼっこしている。よごれた歩道に沿って、ずらりと大道商人が肩と肩と並べている。新聞雑誌の売店、煙草屋、靴紐と靴クリーム、乾酪屋、三文玩具や、糖菓、蜜柑屋。
――ダワーイ! 奥さん、好い、新しい蜜柑! 二十五哥!(一どきに下って)二十哥! ダワーイ!
腕に籠を下げた人出の間を、水色制帽の技師が歩く。犬が歩く。子供が薬品店の飾窓の前の手すりにぶら下って粗製 Pessary を見ている。
ジグザグ歩きをして、私はニキーツキー門まで来た。一人のりんご売が丁度私の前で彼の商品を並べなおしていた。彼の背後から巡査が来た。巡査は何か云いながら、外套のポケットから右手を出し、りんごの一杯並んでいる小判型の大籠を無雑作に片方のとってで持ち上げた。りんごはきたない雪の上へころがり落ちそうになった。商人は慌てて自分で籠を上げた。――巡査は再び両手をポケットへ突込んで歩き出した。