Japanische Klassiker mit Furigana
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『ケプロン・くろだのこうそう』について
中谷宇吉郎集 第八巻
中谷 宇吉郎
Lesen Sie 中谷宇吉郎集 第八巻 (『ケプロン・くろだのこうそう』について) von 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.890 Zeichen · 178 Bildschirme
この内子は、あるていど以上成熟すると、粒の存在がわかる程度に成長して、甲羅の裏についている蓋いぶたの中にたくわえられる。この蓋いぶたは、蝦にすれば、腰の曲った胴体に相当するものである。この中にある子は、外子といって、深紅色のつぶつぶである。この外子も歯ざわりがよくて、また別の味がする。内子も外子もともに、独特の味をもっているが、その基調となっているものは、魚介類の卵の味である。
この二種の卵を食べたあと、脚づきのまま背を二つに折って、まず背の肉を、ばりばりとかむ。雄の方、すなわち越前蟹の肉の味を、少し小味にして、滋味と汁を添加したような味である。背の骨格の薄片が、歯の間にささった感じも、今から思い返してみると、郷愁の一つの要素をなしている。
ところで、この頃、日本の国もやっと昔に返って、金沢の蟹を、客車便で東京まで送ってもらって、こうばく蟹の味を、東京で味わえるようになった。めでたい話である。
こうばく蟹の味を離れて十年か、あるいはもっと経ったかもしれない。その間に、さつま芋の蔓も食べたし、アメリカの料理も食べさせられた。こうばく蟹の味など、もう遠い昔の話で、いま食べてみたら、それほどでもないかもしれないという一種の不安があった。