Japanische Klassiker mit Furigana
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はたちのエチュード
二十歳のエチュード
原口 統三
Lesen Sie 二十歳のエチュード (はたちのエチュード) von 原口 統三 (はらぐちとうぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 61.578 Zeichen · 125 Bildschirme
皆、どこかで見た顔だったが、僕には思い出せなかった。
丘の上に赤屋根の家。煙突の向こうが海。そうして、今、清岡さんが、子供のように跳ね廻りながら、一散に小径の上を、こう怒鳴って駈けてゆく。――その足には、おどけ者の小犬が、じゃれついては、蹴っとばされて。
「これこそ俺の故郷だ! これこそ俺の故郷だ!」
そうして僕は眼がさめた。窓の外は、一面に朝の光が溢れていた。
何といういいお天気だろう! 橋本よ、君はまだ眠っている。きのうの悲しい夢のつづきを、僕の代わりに語ってやろうとでも言うような君の顔。
何も悲しむことはない。起きるのだ。
今日の僕の臆病なこと。日光までが、僕の掌には重たいのだ。風が幾度追い払ってくれても、必ずすぐに戻ってくる――忠実な太陽よ、豊かな太陽よ。
しばらく、あの、白樺の林の上に、秋空に動かない雲の上に、僕の瞳を憩わせてくれ。僕にはもう、暖かさが耐えられない。この執拗な生命の糧を、だれに分け与えればよいのだろう。
ひ弱な魂はそっとあたりを見廻している。――足りないものはないのだ。皆が満足しきっている。草も、木も、黄色い木の葉も、家も、屋根も。