Japanische Klassiker mit Furigana
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はたちのエチュード
二十歳のエチュード
原口 統三
Lesen Sie 二十歳のエチュード (はたちのエチュード) von 原口 統三 (はらぐちとうぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 61.578 Zeichen · 125 Bildschirme
けれどもそれは忠実だ。思いのままの方向に振られながらも、いつでも同じ一本の径を辿ってゆく。
*27
有馬山いなの笹原風ふけばいでそよ人を忘れやはする
涯しない「時」の海原を滑ってゆく人生という船の上に立って、われわれの眼は遠い過去の水脈の跡を追いかける。われわれはその一つ一つの懐しい波頭を見失うまいと努力する。けれども、船は動いている、われわれもまた動いている。無数の同じような波々は、絶えず眼前に展開し、起伏しては、すぐあの忘却の青一色の懐に呑みこまれてしまうのだ。
たえず動いているわれわれの身体と、止まろうとするわれわれの瞳との醸し出すあの悩ましい相剋。――意識はそこで凝結して、あの底知れぬ蒼穹の奥深く、不思議な雲の一片となって昇華する。すると、その雲が風を呼ぶのだ。はるかな過去の水平線の彼方から、潮風がわれわれの頬に、もう忘れてしまった思い出の匂いを運んで来る。
その時、われわれの手は投げる。船尾のデッキから海面を見下しながら、親しい人々の名を呼びつづけては、幾つかの小石を投げこんでみる。
今、そこにわれわれの心がすでに見知っている、かの懐しい面輪がひろがるのだ。