Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
いりえのほとり
入江のほとり
正宗 白鳥
Lesen Sie 入江のほとり (いりえのほとり) von 正宗 白鳥 (まさむねはくちょう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.430 Zeichen · 50 Bildschirme
寝返りを打ってふたたび眠りにつこうとした。が、呻吟がしだいに耳障りになってしようがない。猫を追いだすようにこの睡眠の邪魔物を遠ざけるわけには行かない。……で、彼れはランプを点けて、そっと自分の寝床を、先日まで良吉のいた次の室へ持って行った。そこでは呻吟声がだいぶ遠くなった。
「辰さん……」と、勝代は襖を洩れる灯火に目をつけて、術なげな声を出した。
辰男は返事をしない。夜半の寒さに身震いして、寝床の中へもぐりこんで、灯火を消した。
勝代はふたたび兄を呼んだが、返事がないので、寝床から匐いだして襖を開けてさらに呼んだ。「お父さんの机の上にある薬を取ってきてくれんかな」と頼んだ。薬嫌いで医者がくれた薬さえ二度に一度は秘密で棄てたほどなのに、今の場合父の常用の消化薬をさえ手頼りにする気になった。
たしかに兄は起きているのにと訝りながら、勝代は手索りでマッチを捜して、ランプを点けてみると、兄は例の処に寝ていなかった。近眼を顰めてようようその寝床を見つけると、腹を圧えながら側へ寄って耳許で声を掛けた。誰にも知らさないでそっと取ってきてくれと頼んだ。
辰男は物をも言わず、突如に起上った。