Japanische Klassiker mit Furigana
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いりえのほとり
入江のほとり
正宗 白鳥
Lesen Sie 入江のほとり (いりえのほとり) von 正宗 白鳥 (まさむねはくちょう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.430 Zeichen · 50 Bildschirme
万国史で見た西洋の天子の冠のような形をした小さい島が入江から真近い処にあるのに今初めて気がついた。入江に出入りしてくる漁船は皆その側を通っているのに、彼れはかつてそこまでも行ったことがなかった。
「あれが鍋島だ。樹がよく茂ってるから、あの周囲にはよく魚が寄ってると言うじゃないか」と、かえって兄に教えられたが、そう聞けば島の名前は子供の時から聞馴れているのだった。
「しかし鍋よりも王冠によく似ている」と思って、冠島という課題で英文を作ろうと思いついた。目の下の墓地も、海を渡っている鳥の群も、辰男には皆英文の課題としてのみ目に触れ心に映った。飛んでいる五六羽の鳥は鳶だか雁だか彼れの知識では識別けられなかったが、「ブラックバード」と名づけただけで彼れは満足した。
「辰は英語を勉強してどうするつもりなのだ。目的があるのかい」冬枯の山々を見わたしていた栄一はふと弟を顧みて訊いた。
ブラックバードの後を目送しながら、「飛ぶ」に相当する動詞を案じていた辰男は、どんよりした目を瞬きさせた。すぐには返事ができなかった。
「中学教師の検定試験でも受けるつもりなのか。……英語はおもしろいのかい」