Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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クルスかんのん

十字架観音

野村 胡堂

Lesen Sie 十字架観音 (クルスかんのん) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.655 Zeichen · 27 Bildschirme

Aozora Bunko

二

義俊の父家親が、楯岡甲斐の家で毒を進められ、余吾之介の父松根備前が、幕府に訴えて黒白をつけようとしましたが、証拠がないために敗れて流され、幕府はそれを口実に、山形の所領を収めて、義俊母子を近江三河一万石に蟄居させてしまったのでした。

二

「余吾之介様、山野辺も、楯岡も、のめのめと江戸に帰っております」

「――――」

「向島の山野辺の寮で碁などを打って、気楽に暮しているという噂を聞くと、私は腹がたってなりません」

「――――」

「あの二人を斬って、御先代様の妄執を晴らし、一つは柳川に淋しい謹慎の日を送る、御父上様、備前様を慰めておやりなさいませ」

「いや」

余吾之介は漸く顔をあげました。何時の間にやら日が暮れて、灯がついて、自分はお秋の側に、不本意な盃を舐めているのでした。

「俺はどうもその気になれない。訴訟を起して、お家の獅子身中の蟲を退治する積りだった父上の御心持はよく解るが、主君の亡びた今になって見れば、それは藪蛇であった。山野辺一味に御老中の息がかかっていることも知らぬでないが、この上お互に殺しあったところで、最上のお家が再興するわけでもなく、かえってお上の憎しみを加え、近江三河にあらせられる、御主君に迷惑を及ぼすだけであろう」