Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme

Aozora Bunko

(あの老僧は、小太郎の部屋にいるか、次の間にいるか?)

夜ざとい老人が、起きては邪魔であった。月丸は、次の間のところまで来ると、義観の寝息を窺うため、暫く、じっと、耳を立てていた。だが、少しの音もしなかった。小太郎の室からも、物音は聞えなかった。

(二人とも眠っている)

月丸は、それでも、足に、手に、心を配りつつ、自分の耳にでさえ、少しの音も聞えないくらいにして、次の間と、奥の間の境まで来た。そこに立っている柱が、その境であった。月丸は、右手に脇差を立て、左手を障子へかけた。その途端、次の間から――月丸の半立ちになった耳のところで、障子一重の近さで

「何んの御用かの」

その声は低かったが、柔しかったが、月丸は、頭から、一掴みに、身体ぐるみ、冷たい手で掴まれたように感じた。

義観の声は、月丸の、すぐ耳許でした。余りに近すぎた。その声は、月丸の心の中も、刀も、何も、見ているらしく感じられる声だった。

(この真暗な中で――見えるものか)

と、月丸は、周章てながら、もがきながら、頭の中で叫んでみたが、余りに近く、余りにやさしい、その不気味な声は、見えている、としか思えないくらいのものだった。