Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme

Aozora Bunko

「あっ」

と、低く、短い叫びと同時に、追手は踏み止まって、ぐっと、腹を引いて、刀尖を避けたが、出雲守の掌へは、肉を斬った手答えを感じたし、対手は、刀を抜いたまま、よろめいた。そして

「己っ、手向いを」

と、叫んだ。出雲守は、それを聞きながら、対手が、何うしたか?――倒れたか? 追って来るか? 眼の底に、その、よろめく姿を残したまま、立上ると、走り出していた。前かがみに、笠を押えて、右手に刀を持って、荷物を捨ててしまって――。

だが、突倒された男が、出雲守と同じ速度で起き上って、追って来た。そして、出雲守の抜刀したのを見ると、走りながら、刀を抜いて

「卑怯者っ」

と、叫んだ。神官である井上出雲守は、若侍を対手に、勝てようとは思わなかった。走った。走った。神に祈りながら走った。だが、足音は、だんだん近づいて来た。

出雲守は、追われている鹿の如くに走った。追っつかれたら、それまでだと思った。もう、神に祈るだけの余裕も無かった。

眉をしかめ、口を開いて、荒い呼吸をしながら、絶望的な気持で、走った。

(同志は、切腹したが、自分は、こうまでして逃げて、逃げきれずに、泥まみれになって死ぬのか)