Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
と、小太郎は、疑った。
(もう一度、同じことをせよと、云われたなら?――二度とは、出来ない)
小太郎は、汗を拭きながら、肩にかけた荷物の下の、汗にじめじめするのを、度々、掛けかえながら、少し、引きつる脚で、大津から、坂本への道を、急いでいた。
(綱手――こいつも、死んだ)
小太郎は、綱手のことをおもうと、父の斬死よりも、可哀そうな気がしてきた。
(父は、本望であったかも知れん。然し、綱手は?)
月丸の手に抱かれて、月丸の手にかかって、死んだのは、その男と契った女として、幸であるかも知れぬが、その齢の若さ、死ななかったなら、何んな幸福が、その将来につづいたか? と、思うと、同じような暮しを、長くつづけて来て、これから後も、又、同じである父に比べて、綱手は、人生の、一番幸福なことを、経験しないで、死んで行ったのだと思えた。そして、それが、堪らなく、不憫に感じられた。
(母は、何うしているか?)
七瀬のことを考えると、それは、薄墨色をしていて、考えようがなかった。ただ、母が、苛立ちながら走り歩いたり、行燈の下で、子のことを、心配している姿だけが、思い出されてきた。