Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なんぽうゆうしん

南方郵信

中村 地平

Lesen Sie 南方郵信 (なんぽうゆうしん) von 中村 地平 (なかむらちへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.899 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

金網から離れ、お浜は急にそわそわする。そしてだらしなくはだけている襟もとをあわててかき合わせよう、とする。襟もとがあわさると、こんどは裾がたちまちはだけてしまうのだが、それでもお浜はいくらかほっとする。そして、例のにやにや笑いを浮かべながら、土の上と旦那の顔とを見較べるように眺めている。

そういう時、旦那はいつも上機嫌にからかうのが常である。

「お浜、牡にばかり親切するのでなかど。牝にもオカラをやってくれよ」

お浜は時折り、ワラビやモチクサなどの季節の野の草を、ひとにぎり持ってきて、源吉爺さんに黙ってぬっとさしだすこともある。爺さんはすると、歯のない歯ぐきをまるだしにして喜びながら、両手で押し戴くような真似をして、それを受けとる。孤独な爺さんは、この少しばかり気のおかしい、善良な若い女とむかい合っていると、妙に心がおさまるのである。

晩春の午後、裏庭では旦那が気ぜわしそうに爺さんや、若い衆たちを指図して、小さな祠を荷馬車に積ませていた。

家から一里ばかり離れた、村外れの蜜柑丘には旦那の家の氏神様が祭ってある。高さ一間に足りない小さな祠であるが、その前に佇むと、太平洋の海鳴りの音が微かに聞えてくる。