Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なんぽうゆうしん

南方郵信

中村 地平

Lesen Sie 南方郵信 (なんぽうゆうしん) von 中村 地平 (なかむらちへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.899 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

二

猟銃を携えていないことが、旦那はくやしくてしようがないのである。

二

源吉爺さんは家鴨を飼うことが思いきれない。あるひとつのことに思いつくと、爺さんは少時はそのことに熱中する癖なのである。

ある日、爺さんは裏庭で鶏舎の掃除をしていた。鶏の糞をかき集めると、畑の肥料になるのである。すると、そこへ紺絣の筒っぽに、板裏の草履をはいた三太がやって来た。三太は牧の旦那の独り息子である。糞を集めた莚を土の上に置くと、爺さんは歯のない口で三太に笑いかけた。

「アコン。旦那に言って家鴨ば飼って貰いなさらんか。家鴨の卵は鶏のとは較べものにならんほど、大きかですど――」

お坊ちゃん育ちで気の善い旦那は、戸外へ一歩出ると、まるで気が弱く、人ざわりがいいくせに、家のなかでは別人のように、わがままで暴君である。

こらえ性というものが全くなく、怒りだすと手がつけられない。身のまわりに在るものなら飯櫃でも、金魚鉢でも手あたり次第に投げつける。だから、よくせきの用事でもない限り、家人はめったに旦那に口をきこうとはしない。源吉爺さんが家鴨のことで、そそのかしているように、旦那のお気に入りである三太を、メッセンジャア・ボーイに利用したがるのである。