Japanische Klassiker mit Furigana
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なんぽうゆうしん
南方郵信
中村 地平
Lesen Sie 南方郵信 (なんぽうゆうしん) von 中村 地平 (なかむらちへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.899 Zeichen · 42 Bildschirme
三
家では山羊が咽喉をならして、待ちあぐんでいる筈である。
三
旦那の家の裏門のすぐ傍らには、胴まわりがふた抱えもあるような、太い、高い、椋の樹が聳えている。
初夏の頃になって、枝々いっぱいに青い、かたい、小さな葉が繁ると、この樹には無数の毛虫が棲む。丁度、親指ぐらいもある、大きい、青い、柔かな体をもった虫である。その季節になると、源吉爺さんは仕事の合間をみて、長い物ほし竿をとりだし、二本つないで長くし、空をあおいで梢をたたき、毛虫の群をはたき落す。そして椋の樹の根もとにかがみ込み、石の上で虫の体をたたきつぶすと、中から器用な手つきでてぐす糸をひき抜く。
そのてぐす糸でつくった釣竿をかついで、朝はやくか、夕方、仕事を終ってから、爺さんは裏の川岸へでかける。楽しみの少ない爺さんにとっては、釣が一番の楽しみなのである。
夕方、爺さんが釣にでかける時は、大抵三太がついてゆく。しかし、朝でかける時は、いつもまだ布団のなかで睡っている。そして、豆腐の粕を届けにきたお浜がついてゆくこともある。
川岸にはまだ眠りから醒めないような、伝馬船が一二艘、柳の樹の蔭につないであるばかりで、まだ人影もまばらである。