Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

Lesen Sie 吸血鬼 (きゅうけつき) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.554 Zeichen · 381 Bildschirme

Aozora Bunko

「マア、可哀相に、さぞ痛かったでしょう」

と、妙な気違いめいたことを口走りながら、思わず短剣の柄を握って、傷口から引き抜いた。

書生の一人が、ドアを開いて、室内をのぞき込んだのは、丁度その時であった。

倭文子が、夢中で譫言を口走っている処へ、書生の知らせで、召使達が、顔色を変えて、ドヤドヤと入って来た。

沢山の顔のうしろに、三谷青年の目が、彼女を責めるように光っているのを見た時、倭文子は初めて、ワッと声を上げて泣き出した。この恐ろしい出来事が、夢でも幻でもなく、取返しのつかぬ現実だと、ハッキリ分ったからである。

人々は彼女の手から、血みどろの短刀をもぎ離した。腰の筋肉が利かなくなっている彼女を、抱きかかえて、階下の居間へ運んだ。

その間、彼女はただ、ドクドク、ドクドク、断末魔の様にうちつづける、心臓の音ばかり耳にしていた。ガヤガヤと騒ぎ立てる人声は、自分には何の関係もない、無意味な騒音としか聞こえなかった。

泣きに泣いて、やっと正気に返った時には、茂少年が、訳は分らぬながら、やっぱり泣き顔になって、彼女の側に、ションボリと坐っているのに気づいた。