Japanische Klassiker mit Furigana
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かべのめのかい
壁の眼の怪
江見 水蔭
Lesen Sie 壁の眼の怪 (かべのめのかい) von 江見 水蔭 (えみすいいん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.253 Zeichen · 15 Bildschirme
男は麻布の短き着物、女子は紺の短き着物、白布の脚布を出していた。髪は唐人風の異様に結んであった。最前の浴泉の美女はこの中にいないかと、直芳は注意して見たけれど、どうしても見つからなかった。
従者頭の中老人(佐平という)に向って直芳はささやいた。
「今日まで絵にも見た事のない美しい娘を見つけ出した。なろう事なら妻にもらい受けて、江戸へ同伴致したい」それが串戯とも思われなかった。
「それはとてもむつかしい事で御座りまする。この里からは女を一歩も踏み出させぬ昔からの定法で御座りまするで」と従者頭の中老人は答えた。
「それでは、この土地へ入婿に来たいものじゃ」
「それも駄目で御座りまする。他土地の者は、決して入れませぬ」
「ああ、それでは、どうする事も出来ぬのかなァ」
絶望した直芳は、村人が後から付いて来ぬように、ソッとこの家の庭を出て、森中から岩山へと登って見た。中腹には名も知れぬ小さい神社があった。そこの境内には青萱が繁っていた。最早絵筆を取る心はなかった。怪しきまでに魂を浴泉の美女の為に奪い去られたのであった。
社前の拝石に腰を掛けて、深い溜息を吐いていると、突然、空中から薄黒く細太き蛇が降って来て、危く直芳に当ろうとした。