Japanische Klassiker mit Furigana
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なつむしあんどん
夏虫行燈
吉川 英治
Lesen Sie 夏虫行燈 (なつむしあんどん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.200 Zeichen · 37 Bildschirme
三
すると、同僚の雑賀丹治が、
『高安。ちょっと顔を――』
と、外へ誘った。
『なんだ? ……』
『まだ其許は知るまいな。御城内でも、内密に伏せておるから』
『知るまいとは』
『貴公が聞いたら、定めし小気味よがる事だろうと思って、そっと耳に入れるわけだが、図書係りの海野甚三郎な、何うやら、切腹ものらしいぞ』
『えっ、海野が』
『されば』
『いったい、それは何うした理由で』
『貴公に取っては恋敵――まあ隠さんでもいいさ――その海野甚三郎が、切腹ものとは、耳よりな話じゃないか。萩井家のお小夜どのを挾んで、甚三郎と其許のあいだに、紛争のあった事は、おれも薄々知っていた』
『そうか、海野が切腹となるのか』
『いや、まだ決まった事ではないが、九分九厘までは……という破目になっておるのだ。もっと詳しい事を聞かせたいが』
と、見廻して、
『そうだ、彼れへ行かないか』
と、櫓門のある堤の陰へ誘った。
三
三日ほど前から、御番城の蔵方では、武器係り、道具係り、図書係りなど総勢で、例年のように、御蔵の風入れにかかって、毎日、虫干に忙殺されていた。
事件は、つい昨日のこと。
御蔵奉行の岩瀬志摩が、台帳にあわせて、順々に、検分してくるうち、図書係り海野甚三郎が持場の品が一点、不足している事実を発見した。