Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.629 Zeichen · 408 Bildschirme
吉左衛門と、隣家の金兵衛とが、二人ともそろって木曾福島の役所あてに退役願いを申し出たのも、その年、万延元年の夏のはじめであったからで。
長いこと地方自治の一単位とも言うべき村方の世話から、交通輸送の要路にあたる街道一切の面倒まで見て、本陣問屋庄屋の三役を兼ねた吉左衛門と、年寄役の金兵衛とが二人ともようやく隠退を思うころは、吉左衛門はすでに六十二歳、金兵衛は六十四歳に達していた。もっとも、父の退役願いがすぐにきき届けられるか、どうかは、半蔵にもわからなかったが。
時には、半蔵は村の見回りに行って、そこいらを出歩く父や金兵衛にあう。吉左衛門ももう杖なぞを手にして、新たに養子を迎えたお喜佐(半蔵の異母妹)の新宅を見回りに行くような人だ。金兵衛は、と見ると、この隣人は袂に珠数を入れ、かつては半蔵の教え子でもあった亡き鶴松のことを忘れかねるというふうで、位牌所を建立するとか、木魚を寄付するとかに、何かにつけて村の寺道の方へ足を運ぼうとするような人だ。問屋の九太夫にもあう。
「九太夫さんも年を取ったなあ。」
そう想って見ると、金兵衛の家には美濃の大井から迎えた伊之助という養子ができ、九太夫の家にはすでに九郎兵衛という後継ぎがある。