Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.722 Zeichen · 286 Bildschirme
天気がよいのに、秋がすでに闌わという時ですから、多摩川をさしはさんだ両岸の山々谷々が錦のようになっています。
大菩薩へ通ずるこの街道。お松には思い出の多いところ。
万年橋の上ではたちどまって、川の流れを見下ろしました。
橋の袂で逢った夫婦連れの巡礼。お松はその姿をなつかしくながめて、
「どちらからおいでになりました」
「上方から大菩薩越えをして参りました」
「大菩薩峠の上は、もう雪でしょうね」
「いいえ、まだ雪はございませんでしたが、ずいぶん寒うございました」
「紅葉はどうでした」
「麓がこんなにあかいくらいですから、峠の上はもう冬でございます」
「そうですか、お大切に」
それだけの問答で別れる。
海抜六千尺の峠の頂に、吹雪よりも怖いものはいなかったか、それまではきかず。
向うの村へ渡って、改めて沢井を見渡すと、山巒の中腹に塀をめぐらした机の家は、さながら城廓のように見える。
お松は秋の情景をほしいままにして、山と畑との勾配ゆるやかな道を歩みました。
と見れば、道ばたの芝の上に置かれた剣術の道具一組。袋に入れた竹刀につらぬかれたまま置捨てられて、人は見えない。