Japanische Klassiker mit Furigana
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てんさいけいまい
天才兄妹
野村 胡堂
Lesen Sie 天才兄妹 (てんさいけいまい) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.891 Zeichen · 20 Bildschirme
ストラドヴァリウスを晴れの独奏会でひくことは、名ある武士が正宗の名刀を提げて、戦陣に赴くようなものです。この若い音楽家が、誇らしさと歓ばしさに、身内を慄わせるのも無理はありません。
ベーカーと幾久雄兄妹は、何彼の話に時の経つのも忘れましたが、熊谷へ来てから、信子が切りに渇きを訴えるので、兄妹は食堂に入って、暫らくソーダ水などに喉を潤おしました。
大宮を過ぎてから、車室に帰って来ると、先刻向う側に陣取った赤毛の西洋人と、混血美人とが、幾久雄と信子の席を奪って、ベーカーを挟んで両方に坐り込み、幾久雄兄妹が入って来ても、素知らぬ顔をして動こうともしません。それを見ると、
「アッ」
信子は思わず驚きの声をあげました。
赤毛の西洋人の膝の上に持ったハンケチの下には、紛れも無い短銃――黒磨きの物凄い自働ピストル――がちらりと電灯の光を受けて見えたのです。
幾久雄兄妹は、黙って向う側の空席に着き、網棚から自分達の荷物などを移しました。ベーカーは、短銃を突き付けられて居る人にも似ず、自若として取乱した風も、物に驚いた風もありませんでしたが、さすがにもう先刻のように、兄妹を相手に気軽に話をするような事はありませんでした。