Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.902 Zeichen · 22 Bildschirme
激情に駆られた一人の処女が、凄惨な面を振り仰ぎ、躍動する振袖と裾に燃え上げられて、其儘天井に焼け抜けるかと思うばかり。
「これは良い、見事だぞ左京、――余の浮世絵などの遠く及ぶところでない」
石川日向守は、さすがに芸術のわかる殿様でした。膝を打って感嘆し乍ら、いさぎよく自分の負けを宣言するのです。
数々の下されもの、身に余る御賞めの言葉、その上祝い酒まで下されて、六郷左京上々の首尾で帰りましたが、
「お帰り遊ばしませ」
「――――」
「上々の御首尾で、お目出度う御座います」
ワクワクした心持で迎えてくれた多与里に対して、左京はもう、大した関心も持っていなかったのです。
「多与里殿、長い間御苦労であった、御殿へ帰って休まれるがよい」
左京の口から出たのはたったこれだけ。
「――――」
多与里はその冷い横顔を盗み視ると、そっと涙を拭って立上りました。昨日までの、あの一番熱烈な恋人の態度は、何処へ振り落して来たのでしょう。
「あ、あ、疲れた、四五日存分に休みたい」
左京はそういって、色消しな欠伸を二つ三つ、ポンポンと手を叩いて女中を呼ぶのです。
側にいる多与里などは、もう眼中にもありません。