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Japanische Klassiker mit Furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.902 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

三

「左京、これはなんだ」

「ハッ」

「唯の人形ではないか、振り上げた撞木の下から、念仏でも称えそうではないか――恋の焔に八百八町を火の海にしたお七は、こんな唯の女ではあるまい――余の絵と出来栄え比べなどは飛んでもない」

「――――」

「もう一度やり直せ」

「ハッ」

六郷左京は、無念の唇を噛んで引下る外はなかったのです。わけ知りの主君日向守は、事芸道に関する限り、欺くことの出来ない名君だったのです。

三

六郷左京はお七の像を抱いてお長屋に引下りました。こうなるともうこの彫像を、二度と見るのが嫌になります。

いきなり庭に持出すと、薪割りで真っ向から発矢とやりました。よく枯れ切った木曾の檜材は、左京の腕の冴えにつれて、物の見事に真二つになります。

「畜生ッ、何んの奇瑞も現わさないのか」

左京はなおもそれを切り刻みました。極彩色のお七は、四つに割られ、八つになり、十六に、三十二になって、庭の隅に投り出されます。

「なんということだ」

それに泥を蹴上げて、家の中に入った左京は、猛烈な自己嫌悪に陥って、

「酒だ、酒だ、早く酒を持ってこい」

最後の逃避を、アルコールに求める外は無かったのです。