Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.902 Zeichen · 22 Bildschirme
それからの六郷左京と、腰元多与里の関係は、世にも不思議なものでした。一度処女の心に点じた恋の焔は、左京の冷淡さに煽られて、お七的な激しさにまで燃えさかりますが、一方左京の心境は昔の平静に還って、多与里の事などは、忘れようともせずに、綺麗に忘れるほどの不人情振りです。
一つの芸術の完成のための、ささやかな犠牲が多与里だったのでしょう。そんなものにこだわるにしては、六郷左京は十分に悪魔的でした。
用事を拵えては、左京の長屋へ来る多与里も、その冷淡な態度を見ると、近寄る術もありません。思いの丈を書き綴って、人伝てに送っても返事が来ず、到頭お終いには、多与里の姿を見ただけでもうるさそうに顔を反ける左京です。
この冷たさが逆効果を生んで、多与里の情熱を沸らせるばかり。「こいつは飛んだ安珍清姫だ」屋敷中の者が、袖引き合うようになった頃のこと、
「左京を呼べ」
殿から、俄のお召しです。
「ハッ、御召しで御座いますか」
妙に改まった調子に、六郷左京は冷りとして日向守の御前に平伏しました。
「外ではない、――近頃屋敷中の噂だが、其方多与里となんか約束でも取交したのではないか」