Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.954 Zeichen · 24 Bildschirme
のでした。
この物語のあった当時の綾麿は二十一歳の、血統が血統だけに、典型的な東男でした。色の浅黒い、存分に情熱的な、胸のすく男振りでしたが、貧乏なことは此上なしで、明日の米のことを考えると、二十一の若さも忘れて、目の前が真っ暗になります。
それでも綾麿は、五つ目に日参して、天狗長兵衛の観音様に、敬崇と愛着の真心を捧げることを忘れなかったのです。十四年前此処へ最初に来た時、乳母のお元は百観音の中から、天狗長兵衛の優れた一体を指して、
「これは御先祖様が、若い奥様に亡くなられて、歎きの余り仏師長兵衛に、亡き奥様そっくりの御姿を、観音様に彫ませたということです。勿体ないが、お綺麗でしょう、若様。若様もおみ大きくおなり遊ばしたら、この観音様のようなお美しい奥様をお貰い遊ばすように――」
乳母のお元はそういって、七つになる綾麿を抱き上げ、金色絢爛たる観音様と頬摺りをさせたのでした。
ヒヤリとした触感――綾麿はそれを熱いと感じました。厚い金箔を置いた観音様の木像から、まさに微妙な体温を感じたのです。蠑螺堂の窓から射し込んでいた、折からの春の夕陽が、聖観音菩薩の頬を、ほんのりと温めていたのかも知れません。