Japanische Klassiker mit Furigana
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おくさんのいえで
奥さんの家出
国枝 史郎
Lesen Sie 奥さんの家出 (おくさんのいえで) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.851 Zeichen · 28 Bildschirme
若い楓と若い桜、日光に肌を炙っている。
右手には外濠線の軌道がある。××へ行く電車の軌道である。軌道の向う側は高い崖、崖の上には家並がある。家並の向うは往来なのである。塵埃と人間と色彩と、事務所と印刷所と弁護士の家と、そうして肉屋と憲兵隊本部……などの立っている往来である。
遊園地は外濠の中にあった。崖と崖との底にあった。あるものといえば静寂であった。可愛いい色々の設備であった。
ブラブラ歩いて行く青年であった。――私はブラブラ歩いて行った。
と、二頭の木馬があった。だが、たァれも乗っていない。可哀そうな可哀そうな相手にされない木馬! 四角な箱が一つあった。グルグル廻わる箱なのである。奥さんが坊ちゃんを連れて来て、その坊ちゃんを夫れへ乗せて、廻わせば廻わる箱なのである。廻転箱とでもいうのだろう。遊戯の道具の一つなのだろう。だが、この箱も可哀そうだ。たァれもたァれも乗っていない。
半分咲いている山吹の叢、三分通り咲いている躑躅の叢、あっちにも此方にも飛び散っていた。
また鞦韆が出来ていた。子供専門の遊園地なのである。鞦韆ばかりがあるのである。
長方形の硝子箱――と云っても勿論一方だけが、硝子張になっているのではあるが、勿体らしく置いてあった。