Japanische Klassiker mit Furigana
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おくさんのいえで
奥さんの家出
国枝 史郎
Lesen Sie 奥さんの家出 (おくさんのいえで) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.851 Zeichen · 28 Bildschirme
五
パチ、パチ、パチ、しば叩くので、その大変美しい眼を。そうして私へ云いますので。『おいしいわね、この紅茶!』そうしてもう一度パチ、パチ、パチ! と、何うでしょう、不味い紅茶が、旨く飲めるじゃァありませんか。……だが」
と私は憂愁に云った。
「そんなにもよい眼を持っていたので、奥さんは誘惑されたんですよ。彼奴、さよう、不良青年ですが、胸の悪くなる程いつもいつも、奥さんの眼ばかり見ていましたっけ。家畜が主人の眼をうかがい、そうして夫れに媚びるようにね。……で、こうも云えますなあ、奥さんの美しい眼なるものが、不良青年を誘惑し、誘惑された不良青年が、今度は奥さんを誘ったのだと。いやはや、いやはや、相違ありません。誘惑したものは誘惑されますよ」
五
私は当然意識していた。
非常にお嬢さんが濃艶に、申分の無い可い形で、話して歩いている間中、私に腕を抱い込んだり、私の肩へ手を置いたり、私の胸へ寄かかったり、絶えずコクコク頸いて、私の話へ合槌を打ったり、同情して眉をひそめたり、引っつづめて云うと媚態を尽くして、私の心に取り入ろうとして、努力していたということを。
「一体この女は何物だろう?」