Japanische Klassiker mit Furigana
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
Lesen Sie 妖虫 (ようちゅう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.290 Zeichen · 239 Bildschirme
怪物の二本の巨大な螯は、転がされた反動でブルブル震えていたが、その震えがいつまでたってもやまなかった。やまないばかりではない。螯は明かに怪物の意志によって動き始めたのだ。
やがて、二本の螯が、頭の上で、大きく半円を描いたかと思うと、今度は、巨大な虫の全身がモゾモゾと動き出して、まともに起き返ろうと身悶えするかに見えた。アア、この怪物のような大蠍はやっぱり生きていたのだろうか。
忽ち「ワーッ」という叫び声と共に円陣がくずれた。気の弱い連中は、顔色を変えて、向う側の建物の中へ逃げ込んでしまった。
「生きている! 生きている!」
人々の間に、驚愕の呟きが拡がって行った。
熱帯国には様々の巨大な生物が棲息するという事だ。雀を取って餌食にする大蜘蛛さえ棲んでいる。だが、ここは熱帯国ではない。東京の真中のビルディング街だ。ラッシュ・アワには何十万という群衆が往来する雑沓の地だ。そこに人間大の蠍が蠢いているなんて、余りに荒唐無稽、余りに信じ難いことではないか。
「アア、分った。あれは人間だぜ。人間があんな変てこな虫の衣裳を着ているんだぜ」
誰かがやっとそこへ気がついて叫んだ。