Japanische Klassiker mit Furigana
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
Lesen Sie 妖虫 (ようちゅう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.290 Zeichen · 239 Bildschirme
罠と罠
すると、偽探偵のその言葉が合図ででもあったように、突如、十字架の側の竹藪がザワザワと鳴って、そこから一人の男が姿を現わした。まぶかく冠った鳥打帽子、大きな青眼鏡、濃い口髭、黒の背広姿……彼奴だ。赤い蠍だ。嘗て谷中の空屋で春川月子を惨殺した青眼鏡。近くは相川家の湯殿の窓に現われて、珠子を気絶させた青眼鏡。珠子は思い違いをしていたのだ。彼女を誘拐した偽探偵は悪魔の首領ではなく、真に恐るべき妖虫赤蠍の怪物は、もうちゃんと先廻りをして、さい前からこの藪蔭に、彼の美しい餌食を、今や遅しと待ち構えていたのである。
罠と罠
青眼鏡の現われた竹藪の根元に、芝居の小道具みたいな張りぼての青い岩が据えてあったが、彼はその岩に片足をかけ、身じろぎもせず、長い間、丁度餌食を狙う蛇の身のこなしで、こちらの隅の珠子を、じっと見つめていたが、ややあって、例の異様に嗄れた陰惨な声が、地の底からのように聞えて来た。青眼鏡は物を云う時、殆ど唇を動かさぬものだから、声の源がハッキリせず、殊に斯様な薄暗がりでは、ゾッとする程物凄く聞えるのだ。
「オオ、珠子さん、よく来て下すったね。俺はさっきから、しびれを切らして待ち兼ねていたんだぜ」