Japanische Klassiker mit Furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.161 Zeichen · 412 Bildschirme
自分は近寄って強いかおりをかいで小さい枝を折り取った。
人のけはいがするのでふと見ると、今までちっとも気がつかなかったが、茂みの陰に柴刈りの女が一人休んでいた。
背負うた柴を崖にもたせて脚絆の足を投げ出したままじっとこっちを見ていた。
あまり思いがけなかったので驚いて見返した。
継ぎはぎの着物は裾短かで繩の帯をしめている。
白い手ぬぐいを眉深にかぶった下から黒髪が額にたれかかっている。
思いもかけず美しい顔であった。
都では見ることのできぬ健全な顔色は少し日に焼けていっそう美しい。
人に臆せぬ黒いひとみでまともに見られた時、自分はなんだかとがめられたような気がした。
思わずいくじのないお辞儀を一つしてここを出た。
蝉が鳴いて蒸し暑さはいっそうはげしい。
今折って来た野ばらをかぎながら二三町行くと、向こうから柴を負うた若者が一人上って来た。
身のたけに余る柴を負うてのそりのそりあるいて来た。
たくましい赤黒い顔に鉢巻をきつくしめて、腰にはとぎすました鎌が光っている。
行き違う時に「どうもお邪魔さまで」といって自分の顔をちらと見た。
しばらくして振り返って見たら、若者はもう清水のへん近く上がっていたが、向こうでも振りかえってこっちを見た。