Japanische Klassiker mit Furigana
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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第五巻 (あひるとさる) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.515 Zeichen · 389 Bildschirme
詩と官能
一
清楚な感じのする食堂で窓から降りそそぐ正午の空の光を浴びながらひとり静かに食事をして最後にサーヴされたコーヒーに砂糖をそっと入れ、さじでゆるやかにかき交ぜておいて一口だけすする。それから上着の右のかくしから一本煙草を出して軽くくわえる。それからチョッキのかくしからライターをぬき出して顔の正面の「明視の距離」に持って来ておいてパチリと火ぶたを切る。すると小さな炎が明るい部屋の陽光にけおされて鈍く透明にともる。その薄明の中に、きわめて細かい星くずのような点々が燦爛として青白く輝く、輝いたかと思った瞬間にはもう消えてしまっている。
この星のような光を見る瞬間に突然不思議な幻覚に襲われることがしばしばある。それはちょっと言葉で表わすことのむつかしい夢のようなものであるが、たとえば、深く降り積もった雪の中に一本大きなクリスマス・トリーが立っていてそれに、無数の蝋燭がともり、それが樅の枝々につるしたいろいろの飾りものに映ってきらめいている。紫紺色に寒々とさえた空には星がいっぱいに銀砂子のように散らばっている。町の音楽隊がセレナーデを奏して通るのを高い窓からグレーチヘンが見おろしている、といったようなきわめて甘いたわいのない子供らしい夢の中からあらゆる具体的な表象を全部抜き去ったときに残るであろうと